SIAb.PROJECT

近親姦虐待トラウマからの回復と成長を語り・学び合うプロジェクト

短編集コラム

『体にしみついた恐怖感の伴う感情を取り戻すことの難しさ。』

会社勤めをしていて、いつも年上の男性とトラブルになってしまうことが悩みでした。

転職を繰り返しても、いつも同じような問題にぶつかるので、これはきっと自分の問題なのだろうとは思っていましたが、なかなか原因がつかめずにいました。

つい最近も、あることがきっかけで上司の男性と衝突し、険悪な空気になりました。

“うわべだけ取り繕うのはもうやめよう” と思い、嫌いをあらわに、最小限の言葉しか交わさない期間が数ヶ月続きましたし、結局のところ “自分が仕事上、必要とされていないような気がする”、“寂しい” という感情が根っこにはありました。

なんとなく頭ではわかっていたのですが、それをどうしても認められなかったのは、兄から性被害をうけたことが大元にあったような気がします。

本当は、兄にも愛される妹でいたかった。

性行為は愛情表現でもあり、時に暴力でもあります。

“兄に愛されたかった”
この感情がわいて出てきたとき、同時に久しぶりにフラッシュバックがありました。
体を触られる感覚がよみがえり、鳥肌がたつような感覚がし、だれにも助けてもらえない強烈な孤独感を思いだし、嗚咽しました。

“本当は兄に愛されたかった”
私が性被害を受けたのは、いつも寝ている時でした。
暴力を伴うものではなかったので、それをどこかで “愛情が伴うものであった” と思いたい気持ちがありました。

大人になってから、精神科に通う中で、兄を病院によびだし、医師を交えて話をした内容からも “あれは愛情なんかではない” とわかっていたのにです。
どこかで、すがるように“本当は、多少は愛されていたから自分はあんな目にあったのだ”と思いたかったのです。

今回、上司と衝突した際に、思いっきり上司を嫌ってみました。

嫌う理由が、あれもこれもたくさん出てきました。
だけど、ただ嫌いなだけなのに、どうしてもそこに執着してしまう自分がいて、おかしいなぁと思っていました。

自分ひとりで嫌いな感情を言葉にしてみたり、友人に愚痴を聞いてみてもらったりもしました。
(これまでは、そういうことをあまりしていませんでした。)

そうすると、だんだん “相手を嫌い” を超えて、“攻撃的になる自分” を感じました。

嫌っても、嫌っても憎い。
いなくってくれればいい。
死んでくれればいいのに(笑)

そんな風に感じている自分が、子供のころ、自分にやたらと暴言を吐く兄と重なりました。

でも、“自分が攻撃しても、自分が加害者になってもいい” と今回は思いました。
そして、実際、上司にも理不尽なことを言ったりしました。

こういった“攻撃的な自分”を、身をもって体験してみて、“やっぱり自分が子供のときにされた性被害は愛情なんかじゃない” と、実感することができました。

あれは、ただ、ストレスをかかえた子供(兄)が、近くにいた自分より弱い存在(私)をいたぶっただけなのだと。
もしくは、満たされない自分の心を、身近なだれかで、間違った方法で、埋めようとしていたのかもしれません。

そして、“性行為は愛情表現であったり、暴力であったり、色々な意味づけをされるけど、性行為はただの性行為でしかないのだ” と思いました。

愛情の先にセックスがあったり、ストレスの先に性虐待があったり、いろんな使い方をされるけど、性行為自体には意味はない。

食べる、寝るに意味がないのと同じことだと思います。
だから、過去にあったことも、セックスも、それ自体は何も恐れることではないのだと今は思っています。

兄との問題が、感情レベルの問題だったならば、もう少し簡単だったと思うのです。
たとえば、とても仲の悪い兄妹だった、だけだったとしたら。
“本当は、愛されたかったのだ” と気づいたら、大人になってから、関係を修復することだってできたかもしれません。

性被害がつらいのは、体にしみついた恐怖感、嫌悪感が伴うからだし、また、その解決方法をなかなか教えてくれる人がいないからだと思うのです。

体に染み付いた恐怖感というのは、蛇やゴキブリが怖いということと同じレベルの感覚です。

こういった原始的な?感覚が伴う感情を取り戻すには、どうすればよいのか?

私は、自然の流れに任せてみることを選びましたが(それで済むレベルの問題だったので)、人それぞれにあった適切な治療、サポートが受けられるとよいなぁと思います。

兄に対する感情を感じきることができたら、会社の上司に対する嫌悪感はなくなりました。
仲良くとはいきませんが、まったく気になりません。

過去に置き忘れた感情のかけらが、今にありありと影響をおよぼすこともあるのだなぁ、と感じました。

(N) 

コラム

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