SIAb.

近親姦虐待の被害当事者たちがつながり・語り・学び合うためのセルフヘルプ・グループです。

12-essence

SIAb.の12のエッセンス
12 Essence of SIAb.

「SIAb. の12のエッセンス」は、SIAb.がグループとして成長をしながら末長く活動をつづけるために本当に大切な要素ーエッセンスとして、SIAb.に参加している人たちの経験から提案され、創り上げられたものです。
「SIAb. の12のエッセンス」は、SIAb.にすでに参加している人にとっても、新しく参加する人にとっても大切なものです。
それは、SIAb.が、「自分自身の近親姦虐待被害によるさまざまな問題に向かい合い、なんとか生き延びながら、健康的な社会生活を取り戻し、維持していけるように『真の自立』を身につけたい」と願う当事者が、その目的のためだけに主体的に関わる集まりだという、大切な要素を思い起こさせてくれるからです。
この「SIAb.の12のエッセンス」では、より理解を深める事ができるように、各エッセンスに説明を加えました。

1私たちが最も大切にしていることは、近親姦虐待被害の当事者全体の幸福と利益です。
近親姦虐待被害の当事者(以下、「当事者」という。)の回復は、SIAb.の一体性((同じ願いを持ち、行動すること)にかかっています。

解説

SIAb.にすでに参加している当事者たち(以下、「参加者」という。)は、近親姦虐待被害の当事者(以下、「当事者」という。)という潜在する多くの当事者全体のほんの一部なのです。
当事者それぞれの回復は、SIAb.が、「自分自身の近親姦虐待被害によるさまざまな問題に向かい合い、なんとか生き延びながら、健康的な社会生活を取り戻し、維持していけるように『真の自立』を身につけたい」と願う当事者が、その目的のためだけに主体的に集まるという、一体性にかかっているといえるのです。
SIAb.がグループとして長く活動を続けられなければ、参加者や、これから参加しようとする当事者の多くが苦しみ、自分のために生き抜くことが困難になるでしょう。
ひとりひとりが欲望や野心を抑えないと、グループの健全性が損なわれる恐れがあります。往々にして富や権力や名声は、人間らしさを失わせ、平和と調和が失われ、闘争を招き、グループの一体性まで脅かします。
それゆえ、SIAb.の存続は、参加者が安心感と安全感を感じられるような「場」を維持するために、お互いが謙虚さや他者への思いやり、そして信頼と行動を保つなどの最善の配慮を心がけ、一体性を維持していく必要があるのです。
それが最終的に当事者全体の幸福と利益につながり、そして個人の幸福と利益へと続くのです。

2SIAb.には、尊重され、信頼できるものがただ一つあります。それは、「ゆるぎない寛容と信頼と慈愛」から芽生える「場の力」です。
SIAb.は、参加者全員が平等です。各グループの管理人や運営に携わる参加者は、奉仕を請けおった有志の当事者であり、支配はしません。

解説

SIAb.のグループには、尊重され、信頼できるものがただ一つあります。それは、「ゆるぎない寛容と信頼と慈愛から芽生える「場の力」です。
SIAb.のミーティングの「場」では、日常や社会における「判断」が入る前の、ありのままの、ジャッジのない純粋な気持ちや感覚を言語化し、どんな認識も「全部、私の経験」として、過去がバラバラにならないようにまとめる作業を行います。 それが成立するには、聴く側の「ゆるぎない寛容と信頼と慈愛」が必須なのです。
そして、それが成立したときに、その良心のなかに、自分自身を表現することができる安心感、安全感が生まれ、「場の力」が芽生えるのです。
これらが参加者に共有され、SIAb.の各グループや運営会議において、問題や課題について話し合いがなされ、決定を下そうとするときに「場の力」が現れ、賛否の数よりも大きな結果が得られます。
なお、SIAb.では、12のエッセンスと12のガイドラインを理解した参加者が、主体的にそれぞれの役割を請けおっています。

各役割について

【グループ管理人】
各グループの管理人は、グループ開催を成立させるための準備や管理を行います。なお、グループ内にも、役割があります。
ファシリテータ:会の進行をします。
ガイド:ワークショップにおいて、自分のもっている知識や技術を提供して会をリードします。
【プロジェクトのメンバー】
SIAb. プロジェクトのメンバーは、SIAb.参加している有志の当事者であり、プロジェクト実行のための準備や管理を行います。
【プロジェクト・リーダー】
SIAb.のプロジェクト・リーダーは、プロジェクトを発案した人が行うことが望ましく、経理やプロジェクト終了後に、運営会議で活動報告をします。いずれも、必要であれば、実務を分担してくれるメンバーを選ぶのもよいでしょう。
【運営会議のメンバー】
各グループの管理人やSIAb. プロジェクトのメンバーは、運営会議のメンバーでもあります。運営会議メンバーは、SIAb.の全ての活動に参画し、「SIAb. の12のエッセンス」を見守ります。
【事務局担当・経理担当】
各グループの管理人やプロジェクト・リーダーは、SIAb. の参加当事者からの献金の受け取り人です。献金は、事務局担当と経理担当が管理し、運営会議で監理を受けします。
運営会議や事務局は、この献金によって維持されます。
そして、SIAb. 全体の広報活動を行なう権限を、管理人やSIAb.プロジェクトに託し、ホームページからの情報発信が、本来の形で発信されるよう監理しています。
【SIAb.代表】
SIAb.の代表は、運営会議によって選任されます。
代表は、運営会議で話し合われたことの最終決定をします。ただし、その場合、私たち当事者全体の幸福と利益が優先されます。
SIAb.代表と運営会議のメンバーは、SIAb.の運営や経理、事務が、滞りなく行われるように監理しています。

これらの役職につく人たちも、皆が当事者であり、主体的に奉仕を請けおった有志の人たちです。支援者でも治療者でもなく、他の参加者と平等な立場です。よって、誰のことも支配しません。
彼らが役立っているかどうかの判断の手がかりは、全般に信頼を得て尊敬を受けているかどうかです。それを見極めることが必要であり、それをするのは参加者全員です。

3SIAb.に参加するために必要なことは次の3つです。

  • あなたが近親姦虐待被害の当事者であること。
  • 健康的な社会生活を取り戻し、維持していけるように「真の自立」を身につけ、回復したいと願っていること。
  • 「あらゆる暴力の加害者」にならないことを望んでいること。もしくは、それを止めたいと強く望んでいること。
解説

SIAb.は、近親姦虐待被害の当事者であり、後遺症からの回復と『真の自立』を身につけたいと願い、あらゆる暴力の加害者」にならないことを望み、もしくはそれを止めたいと強く望んでいる人であれば、どなたでも参加していただけます。(現在は性自認が女性のみ)

参加するかどうかは、SIAb.の12のエッセンスと12のガイドラインを読んでいただき、本人の判断に委ねています。
参加の際は、ピアミーティングのルールやワークショップのルールを尊重してください。

重要なことは、要約すると次の3つです。

  • SIAb.は、近親姦虐待当事者のためのグループであり、参加者はみな平等であり、参加者であるために何らかの規則や権威に服従する必要もありません。また、生活環境や状態を問われることもありません。
  • 平穏で健康的な社会生活が送れるように、自分のために生きる感覚を取り戻し、維持していけるよう、社会資源や様々な支援につながり、助けをかりながら「真の自立」を身につけ、回復を願い、そのことだけを目的として参加する、ただそれにつきます。
  • 怒りの感情によるあらゆる暴力的な衝動を止めたいと切に望み「あらゆる暴力の加害者」にならないことを望んでいる人、もしくはそれを止めたいと強く望んでいる人であれば、参加を拒みません。

4SIAb.全体に影響を及ぼす事柄を除いて、各グループやSIAb.プロジェクトは、自立的である必要があります。各々の主体性は尊重されます。

解説

SIAb.の各グループおよびSIAb.プロジェクト内の問題や計画について、各々は何らかの権威に対してではなく、自分たちの良心に対して責任を負い、自立的である必要があります。
ですが、その問題や、計画行動が他のグループの幸福と利益に関係する場合は、運営会議に相談・提案する必要があります。
また、どのグループおよびプロジェクトチームも、あるいは個人も、SIAb.全体に大きくかかわるような行動を取ろうとする場合は、まず運営会議に判断をあおぐ必要があります。その場合、私たち当事者全体の幸福と利益が優先されます。 
SIAb.の12のエッセンスとSIAb.の12のガイドラインを十分に理解した参加者が、2、3人集まり、SIAb.以外のどんな団体に属さずも加入しておらず、SIAb.の原理に従い、且つSIAb.以外のどんな団体に属ささないずう限り、自分たちのことをSIAb.のグループとして名乗ることができます。
※ただし、グループを新設する際には事務局に申請をし、運営会議にて承認を得てからとなります。

5SIAb.の本来の目的はただ1つだけです。それは、今も独りで悩み、苦しんでいる当事者に私たちの存在を伝えることです。

解説

SIAb.の各グループおよびプロジェクトは、いま苦しんでいる当事者に私たちの存在を伝えることだけを本来の目的とし、謙虚で献身的な良心の共同体であり続けます。
なぜなら、過ぎた介入や支援は、個人の回復や成長を止めてしまうからです。また、時代や社会背景、地域性などに依らず、グループのあり方も普遍的である必要があります。
まずは、当事者の幸福と利益を優先し、自立的であり、「ゆるぎない寛容と信頼と慈愛」から「場の力」が芽生えるよう、安心感や安全感のある「場」を維持していていくことが大切だということを伝えていきます。

6SIAb.は、どのような外部企業や団体の事業に対しても、その活動を推奨したり、資金を提供したり、または貸与することはありません。また、SIAb.の名前を貸す事はありません。お金や財産、名声によって、私たちがSIAb.の本来の目的から外れてしまわないようにするためです。

解説

金銭、財産、権威、名声の影響は、私たちを本来の目的から簡単に逸らす可能性があります。
ですから、私たちは純粋にセルフヘルプ・グループのためだけに用いられる財産は、すべて団体として管理し、物質的なことと献身的なことを分けるべきだと考えています。
SIAb.プロジェクトでは、当事者の回復の手助けとなる事業を計画し実行しますが、その際はプロジェクト・チームを設立し、各グループとは経理や運営を分けるが必要があります。そして、必要が生じた場合はばSIAb.の運営会議がいつでも介入できるようにします。
このSIAb.プロジェクトの運営や管理は、その運営に主体的に参加し、支える人たちで行なっていきます。
SIAb.プロジェクトの参加者は、通常SIAb.の参加経験のある有志の人である事が望ましいのですが、専門性が必要となるプロジェクトにおいては、専門的な知識や技術を持つ者から指導を受けながら運営を行うかどうかをSIAb.の運営会議で十分検討します。
なお、SIAb.は、どのような外部企業や団体の事業にも決して携わる事はありません。
よって、虐待問題や他の近親姦虐待問題に関わる外部の団体とは、“協力・協働はするけれど、帰属はしない”という方針を守ります。

7SIAb.は、外部からの援助や介入を辞退して、完全に自立します。
ただし、私たちに必要なことについては、運営会議で十分検討し、必要であればSIAb.のプロジェクトとして助成金を申請し、それを実行することがあります。

解説

SIAb.の各グループは、参加者によるな献金で運営し、自立します。また、何らかの義務が生じるような寄付を受けることは賢明ではないと考えています。
SIAb.プロジェクトは、参加者が主体的に提案され、なおかつ当事者に必要であると思われることを、SIAb.の運営会議で十分に検討し、その事業を明らかな目的をもって行います。必要であれば助成金を申請し、その助成の範囲内でプロジェクト・チームを立ち上げて運営・実行をします。
なぜなら、私たちは、明らかな目的もないままに蓄積される資金に大きな懸念を抱いているからです。
財産、金銭、権威、名声をめぐっての無益な論争が、私たちの幸福と利益を確実に破壊するものである事は、すでに経験から学んでいるからです。

8SIAb.に参加する当事者は、職業化されずアマチュアである必要があり、参加する場合は、あくまでも一当事者として参加します。
ただし、事務的な処理やプロジェクト事業での必要性により、専門的な技術のある者として雇う場合があります。

解説

当事者がカウンセリングや支援、相談などの職業についていても、SIAb.に参加しているときは、職業として個人的に参加者から料金を取ったり、給与をもらうなどをしてはいけません。あくまでもSIAb.に参加する場合は、ひとりの当事者として、平等な立場で参加する必要があります。
また、グループやプロジェクトの開催中や行き帰りで、個人的なことについての斡旋や勧誘も、絶対にしてはいけません。
虐待問題や他の近親姦虐待問題に関わる外部の団体やそれらのイベント、または医療機関や支援機関について情報交換をする場合は、各グループの管理人や事務局に提案をし、その指示にしたがう必要があります。なお、この件について各グループの管理人やプロジェクト・リーダーで判断することが難しい場合は、運営会議に判断を仰ぐことができます。
ただし、事務的な処理や、各グループおよびSIAb.プロジェクトでの必要性により、専門的な技術のある者を雇う場合があり、これに対してはそれ相応の報酬を支払います。

9参加者は、決して組織化されるべきではありません。
ただし、各グループの管理人や、SIAb.プロジェクトのメンバーたちによって、ボランティアでの運営会議の開催やプロジェクトチームを立ち上げて、SIAb.の運営をします。

解説

SIAb.の各グループやSIAb. プロジェクトは、組織化を必要最小限にとどめるべきです。
各グループの管理人やファシリテーター、またSIAb.プロジェクトのリーダーなども、交代制であることが望ましいです。

これらの役職についた参加者たちは、全て奉仕の精神によって導かれ、それを主体的に請けおっています。
ですが、彼らは、参加者全体のための業務の請負いにほかなりません。
彼らは、その肩書きによってどのような権力も得ることはなく、また支配もしません。
彼らが役立っているかどうかの判断の手がかりは、全般に信頼を得ているかどうかです。それを見極めることが必要であり、それをするのは参加者全員です。

10SIAb.は外部の問題について意見をもちません。したがって、SIAb.の名前は公の場の論争に引き合いに出されることはありません。

解説

SIAb.の参加者はSIAb. を巻き込むような形で外部論争に対して意見を述べてはなりません。特に政治や宗教問題、治療者と当事者間の問題、あるいは他の自助グループ間や当事者間の問題には立ち入ってはいけません。それらの問題については、どのような意見も表明しません。
ただし、自分たちが本当に必要なことであれば、運営会議で十分検討し、SIAb.全体の意見として発言する場合があります。

11SIAb.の広報ポリシーは、宣伝よりもSIAb.の活動によって生みだされる魅力に基づいています。報道やメディアでの取材や出演の際や、講演やイベントなどに登壇する際には、常に個人の匿名性を維持する必要があります。ただし、事務的な問題や、SIAb. プロジェクト活動において必要であればその限りではありません。

解説

私たちの広報活動の特徴は、個人名を伏せた無名性にあります。また、SIAb. はセンセーショナルな宣伝を避けるべきだと考えています。ですので、報道やメディアでの取材、または出演の際や、講演やイベントなどに登壇する際には、SIAb.の参加者や個人の匿名性を維持する必要があります。これは、私たちがSIAb.の本来の目的から外れてしまわないようにするためです。
私たちの広報活動は宣伝ではなく、SIAb.の活動によって生みだされる魅力に基づいています。謙虚に活動を続け、本当に必要な人が参加しやすいよう、安心感、安全感のある「場」を維持することを大切にしているからです。
ただし、SIAb. プロジェクトの活動において、私たちが必要であると考えた活動は、十分に運営会議で検討し、それに応じた広報を行います。

12匿名性は、SIAb.全体の精神的な基礎です。それは、各個人の利益よりも前に、原理である「近親姦虐待被害の当事者全体の幸福と利益」を最も大切にすべきことを、つねに私たちに思い起こさせるからです。

解説

近親姦虐待被害 の当事者である私たちは、無名であることには精神的に計り知れない重要性があると信じています。
それは、個人よりも原理が優先していること、SIAb.の一体性が実行されなくてはならないことを、いつも私たちの心にとどめてくれます。
そして、私たちが「場」から受けた気づきや恩恵に決して甘んじることなく、私たちすべての当事者を導く「場の力」への感謝の思いのうちに生きるためです。

私たちが、健康な社会生活を取り戻し維持し「真の自立」をするためには、過去を整理し、真実という確固とした基盤に立って自分自身を尊重し、真の謙虚さをつかもうと努力していくことです。
SIAb. のなかで真の自分を認め、共同体としての、社会の中でのSIAb. の真の立場を認め、自分の関り方を見極める、知ることで実現します。

最後に、「真の自立」とは、自分自身と向かい合い、受け入れることからはじまります。そして、必要な他者や社会的資源に主体的につながることができるということです。
匿名性は、本物の謙虚さの実践であることを忘れないようにするために守られます。
自分の回復や誰かの回復は、自分の手柄ではないのです。

2020年10月01日制定 SIAb.

免責事項について

SIAbの12のエッセンスは、アルコホーリクス・アノニマス・ワールド・サービス(以下A.A.W.S.)社の許可の下に再録または一部が変更されています。
A.A.W.S.社によるこれらの許可は、A.A.がSIAbのプログラムと提携関係を結んでいるという意味ではありません。
A.A.は、アルコホリズムからの回復のみに向けられたプログラムであり、A.A.をモデルにした他の問題に取り組むプログラムや活動が、A.A.のステップと伝統、あるいはその一部を変更し使用することに、それ以上の意味を持つもの ではありません。
また、A.A.と関連のない文脈において使用する場合も同様です。

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