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近親姦虐待の被害当事者たちがつながり・語り・学び合うためのセルフヘルプ・グループです。

短編集コラム

映画「ショートターム」と虐待された子ども像と

シアブのメンバーから一本の映画情報をもらった。
「ショートターム」(原題:SHORT TERM 12)という外国映画だ。
ネットで調べると、高い評価と売り込み文句が目に入る。
予告編を見ると、商業用の宣伝文句は少し気になったが関心は向いた。

さて、雨降りの中、映画館に行った。
悪天候の平日にも関わらず、それなりにお客さんは入っていた。
本編が始まり、最初は少し退屈だった。
「やっぱり”それっぽい”だけの映画なのかな」と、とろとろしていると、主人公の女性が上司に向かって怒るシーンが印象を変える。

『あなたたちは(セラピスト等も含め)は何も解っていない!』
といった内容の事をぶつけるシーン。
少女が虐待されているシグナルを発しているにも関わらず、自己申告がないと周囲が動かないばかりか、虐待していると思われる親に請われて、子どもを返す判断を下した事への抵抗場面だ。

そして上司から、現場スタッフが専門家等に口出しするなと諭された事に、主人公は怒りを爆発させるのだ。

彼女の設定は「ケアテーカー【caretaker】」。
あまり聞きなれない言葉だが、日本で言うところの介護人、世話人という立ち位置だろうか。
いわゆる施設職員、ヘルパーに近い仕事の様に見える。

彼女が激した背景は、彼女自身も過去に虐待経験を持っていた為だ。
しかしそのことは誰にも明かしていない。
ここからは睡魔に襲われる事も無く、エンディングまでしっかり観る。

映画の中で特に目を引いたのは、子ども達の演技だ。
作り手が描いた虐待背景を持つ子ども像について考える。

この子達の背景を深く描いてはいないが、職員側の台詞の中に、虐待問題の深刻さ、現状の厳しさ、救われない現実が込められる。
所々に散りばめられた観る側の想像力、思考力を頼りとする演出と、静かな抑えた子どもの演技はリアルだと感じた。
映画を通してこの問題を共に考えよう!という呼びかけさえも感じる。

私個人の考えだが、自分自身も通して虐待を受けた、受け続けている子どもはどういうイメージがあるだろうか?
色々なケースがあるのでこれも一つのケースとして捉えて欲しいのだが、「どこにでもいる子ども」である事も多いというのはは、あまり知られていないのではないか?・・・と、映画を通して更に強く感じた。

かつての私にも、虐待や環境の異常さを感じさせるシグナルは確かにあった。
日常の中に組み込まれている為か、解りやすい問題行動や状態にならない限り、周囲も社会も嫌悪したり不快がったり手を焼きつつも記憶に残らない。
放置できない程、常軌を逸した行動で、子どもが自他共に害を及ぼし始めてからでは遅すぎると思う事がある。

最悪なのは、子どもが命を落としたり誰かや何かを殺めるからだ。
そこまでいかなくても、結果的に放置された状態で成長した子どもは、社会との折り合いがつかないことも多くなるのではないだろうか?
社会的に問題のある人間として、その後をどう彷徨うのか?
これは専門家でなくても想像に難くないのではないか?と思う。

だから、映画「ショートターム」の中に出てくる子ども達の描かれ方は、貴重だと感じた。
少し危うそう、影がある、無愛想、孤立しがち―そうかと思えば軽口を叩き、談笑し、ゲームに興じる。
どれも見た目に特別記憶に焼きつくものはない。
この施設に来た、という設定の背景以外は・・・。

怪物的な陰鬱さも、破壊的な天才さも、美少女や美少年でもなく、性的な奔放さもない。
神々しいまでの純粋さや聖なるものもない。
思わず目を引かれるものは何も無い。

普通。
ごくごく普通。

見渡せば「あー、いそうだな。こういう子ども達」そんな感じだ。
この映画を作ってくれた人たちに頭が下がってしまうのは、こんな所にもあるのだ。

また、目を奪われそうな娯楽要素を排した重たいテーマの映画にも関わらず(抑えすぎて物足りなさもあるだろうに!!)、劇場に足を運んでくれる人たちを見るのは、映画と同じくらい私の中にも響く。
人の関心がどれ程ありがたいことか、じわじわ心に染みるからだ。

しかし、目を覆い耳を塞ぎたくなる程の虐待環境と、子ども自身があまりにも普通すぎる時、(記憶に残らない程の状態)その子どもは、どうしたら関心を向けてもらえるのだろうか。
その子が誰にでも解る遺書を残して酷い自殺や自傷行為をするのはどうだろう?
または後世に残るような猟奇殺人でも犯してみるのはどうだろうか?
或いは自分自身の言葉を探し表現を通して、外の世界と自分以外の人間に向けて伝えるのはありだろうか?
映画の中の子ども達の様に伝える言葉を探して、支えてくれる人たちを巻き込みながら。

それでも多分、どれもやはり時間と共に忘れ去られてしまうだろうと思う。

だけど私は3番目の選択をとりたい。(*^^*
この世の中には正しい選択などないのかも知れない。
でも誤ってしまう選択はある様な気がする。
子どもが誤った選択をしてしまわないように、かつて子どもだった大人たちが、誤った選択をしてしまわないように。

映画を観終わってあれこれ考えながらそんな事を思う。
多分、これからもずっと思い続けていたい。

映画「ショートターム」、お勧めです♪

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