11月2日(水)、「性犯罪の罰則規定に関する意見書」を公表した日本弁護士連合会との面談にSIAb.も参加してきました.
「性暴力と刑法を考える当事者の会」、「性暴力禁止法を作ろうネットワーク」の当事者やその支援者と共に、仲間の要望を伝えてきましたので、 その報告です。
まず、この面談が行われた理由から。
2016年9月に法制審議会の総会において「刑法性犯罪改正要綱(骨子)」が承認され、法務大臣に答申されましたが、その後、9月15日に、日本弁護士連合会は「性犯罪の罰則規定に関する意見書」を提出しました。
その内容は、こちら↓
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2016/opinion_160915_4.pdf
この意見書の中には、
『妊娠の危険のない、姦淫以外の行為類型に該当する事案は、刑法において“姦淫”よりも処罰に値する違法性を欠く事案があることは否定できません。』
とあります。
つまり、『口腔や肛門への性的侵襲は、膣への挿入と違って妊娠する危険が数ないから、それよりも処罰は軽いものがあるということは否定できません。』とのこと。
もう一つ、
『13歳以上は性交の意味を十分理解することが可能だから、相手が監護者[1]であるからといって直ちに真摯な同意がないとみなすことはできない。なので、非監護者の意思に反する行為のみが処罰の対象となることが、文言上明確にされるべきである。』
としています。
つまり『「わいせつな行為をした者」とあるのは「相手方の意思に反してわいせつな行為をした者」とし、「性交等をした者」とあるのは「相手方の意思に反して性交等をした者」とされるべきである。』ということです。
ということは、『13歳以上は、性交の意味を理解することが可能なので、監護者であるからといって、「いやです!やめてください!!」と被監護者が抵抗しないというのは考えづらい。したがって意思に反しているかどうかは直ちに判断できない。』という見解を示したということです。
刑法には「疑わしきは罰せず」の基本的な原則があるので、
『「抵抗をした人に対して性交を行った者」という文言を入れて明確化したほうがいい。』
と書かれていたのです。
共に面談に臨んだ「性暴力と刑法を考える当事者の会」のブログに次のように書いています。
『 このような意見書は、私たち当事者にとっても、性暴力の現場に関わる支援者にとっても、とても受け入れがたいものでした。
読んだときは、人権を擁護する弁護士さんたちが「親子のような監護者と被監護者の間で真摯な同意がある性行為がありうる」と考えていることに打ちのめされました。この意見書自体が被害者にとっては二次被害です。被害当事者の思いや意見を伝えようと思いました。』
(「性暴力と刑法を考える当事者の会」のブログから抜粋)
全文はこちら↓
http://saandcliminallaw15.jimdo.com/%E6%B4%BB%E5%8B%95%E5%A0%B1%E5%91%8A/
(*「活動報告」の最下部までスクロールする記事があります。)
ということで、「性暴力と刑法を考える当事者の会」が中心となって面談を申し込み、要望書を提出することになりました。
次に面談について。
日本弁護士連合会からは副会長の山口健一弁護士、事務次長の神田安積弁護士に要望書を提出し1時間くらい面談をしました。
3団体から、それぞれ要望書のポイントを7~10分ずつくらい説明し、その後意見交換の時間を持ちました。
SIAb.の要望書は以下のPDFこちら ↓ をご覧ください。
日本弁護士連合会「性犯罪の罰則整備に関する意見書」へ反対の要望書
(*提出後、解りやすく訂正したものもUPします。(赤字部分が訂正箇所です。こちらをクリック→「要望書訂正版」)
SIAb.からは、以下の意見をお伝えしました。
「今、目の前で語っている大人の私(当事者)ではなく、ランドセルを背負った少女が被害に遭っているところを想像しながら聞いてくだい。」
と前置きした上で、実際の被害体験を交えながら、口腔であれ、肛門であれ、性器であれ、その他の物であれ、同意なき性的侵襲は心身ともに傷つくことを説明しました。
先の法制審議会でも発言したのですが、非監護者が監護者からの性的侵襲に、反抗したり声を上げることができない理由も、改めて実体験を交えて話させていただきました。
そして、
「確かに13歳で性交は理解できるけれど、性交の意味や、それと愛との関連や、家族とは本来何なのか、なぜ家族間では性交はダメなのかまでは、理解できていないはず。だからこそ、私たち当事者はずっと混乱して悩み苦しんできたし、精神的に苦しんでいる人が多いのです。」
という事をお伝えしました。
その後、参加者の方から
「日本弁護士連合会の意見書を読んで、被害者がどのように思うかは考えられなかったのですか?」
という質問が出た折には、
「意見書自体を出すことに反対の意見もあったけれど、二次被害になるという事まで考えて議論がなされたわけではない」
というようなご返答がありました。
また、「性暴力と刑法を考える当事者の会」宛に、日本弁護士連合会から「質問書があるなら事前に送ってほしい」と言われ、10月28日に送ったのですが、「質問書には答えられない」との回答があったそうです。
面談の時も「質問書に回答してほしい」、「回答してもらえないならその理由を聞かせてほしい」と要請しましたが、「質問書の回答は、個人的にはできない。」ということで、日本弁護士会としても難しいということでした。
このあたりの詳細は、先ほどの「性暴力と刑法を考える当事者の会」のブログをご覧ください。
面談の最後に、
「 今回、この意見書を日弁連さんから提出していただいたことで、弁護士さんたちの性犯罪や性虐待についての認識を知ることができました。
私たち被害当事者は、被害後は生き抜くことで精一杯だから、誰かに助けを求める場合、まず警察や医療や支援関係の方々、そして弁護士さんを頼ります。
その弁護士さんが、あまりにも被害の実態を知らなかったということが判ってよかったです。
事件の影響で、混乱の中にある私たち当事者たちの状態を理解していただけるよう、これから私たちも考えなければいけないし、“なぜ13歳以上でも抵抗できないのか”あたりなどを、日弁連の会議に持ち帰って、ぜひ、もう一度議論していただきたいと思います。」
とお伝えすることができました。
ですが、これまで日本弁護士連合会が出した意見書を撤回したり、修正したりしたことはなかったとのことです。
でも、それはたかが前例。
いくらでも、それを打ち破る事は出来るはずです。
100年振りの刑法改正です!
どうか、加害者を守るためではなく、弱者を第一に考えてください!
被害当事者が回復することで、加害者も本当の意味での回復が始まるのだから…
終わりに。
今回も、いろいろな方々のご協力で、SIAb.を代表して弁護士さんたちとお話しできたことは、とても大きな一歩だと思いました。
ご協力いただいた皆様に心より感謝します。
長文を最後まで読んでいただきありがとうございました。
[1] 『親権は、子どもと一緒に暮らし世話をする、いわゆる「保護者」となる「監護権」(身上監護権)と、子どもの財産を管理し、法律上の代理人となる「財産管理権」の2つに分けることができます。』
弁護士ドットコム 『1.親権とは』 からの抜粋 https://www.bengo4.com/c_3/c_1030/gu_15/
本当にお疲れ様でした。
コメントいただきありがとうございます。